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ミッチ・ニコルスへのオファーについて

Posted at — Jan 4, 2014

セレッソ大阪がランコ・ポポヴィッチ新監督を迎え、新たな体制を構築しようとしている中、Aリーグのメルボルン・ヴィクトリーに所属するMF、ミッチ・ニコルス(Mitch Nichols)に対して獲得オファーを提示していることが、昨年12月23日、現地メディアThe AgeおよびFox Sportsの報道で明らかになりました。以来、ニコルス関連のニュースを定期的にチェックし、Twitterアカウントの方でツイートしており、たくさんのリツイートをいただいております。日本メディアがほとんど報じておらず、現地メディアの情報に頼らざるをえない状況の下、このあたりで一度既出の情報をまとめておこうと思います。

ミッチ・ニコルスの選手としての能力に関しては、私もあまりよくわかりません。YouTube等で”Mitch Nichols”で検索し、プレー動画をご覧ください。この記事との関連では、ゴールドコースト生まれで、ブリスベンで活躍したこの24歳は、昨年5月にメルボルン・ヴィクトリーに加入したばかりであるということだけご承知いただければ十分かと思います。

12月23日の最初の記事では、「今季Aリーグで突出した選手の1人」であるニコルスに対して、セレッソがオファーを出したということが報じられました。これに対し、クラブないしケヴィン・マスカット監督はできる限りニコルスをチームに留まらせたいという意思を明確にしており、これは今でも変わっていません。このとき、よく引き合いに出されるのが、千葉にも所属したヴィクトリーのキャプテン、マーク・ミリガンの移籍話です。ミリガンは、今季前にイングランド・プレミアリーグのクリスタル・パレスから100万ポンド(150万ドル)の獲得オファーを受けていましたが、クラブ側は抵抗し、ミリガン残留を勝ち取りました。ヴィクトリーとしては、これは重要な経験となっていることでしょう。

その後、現地メディアであるThe Age、Fox Sports(あるいはそこに記事を提供しているHerald Sun)、SBSの3つを中心に、報道が展開していきます。12月26日のSBSの記事では、ヴィクトリーがニコルス移籍に消極的な姿勢をとっており、セレッソのオファーがその姿勢を和らげるほどの額ではないことが伝えられました。そして、12月30日、The Ageは、ヴィクトリー側の関係筋から、その移籍金額が20万ドルであることを明らかにしました。同日のSBSの記事によると、獲得後に売却した際にそのうちの50%がヴィクトリーに入る条件がつけられていたようですが、ヴィクトリー側に言わせれば「ピーナッツ」という程度で、ヴィクトリーは「激怒した」と伝えられています。なお、12月27日のHerald Sunの記事によると、ニコルスの契約にはリリース・クローズ(放出条項)がつけられていないようですが、これはなにもフリーで獲得できるということではありません。クラブが首を縦に振らない限り獲得はできない、と理解していいと思います。リリース・クローズに関しては、最近では昨年夏、リバプールのルイス・スアレスの移籍をめぐってちょっとした騒動が起こっていましたね。

12月30日の報道で、メルボルン・ヴィクトリーがセレッソ大阪のオファーを却下したことが明らかになりました。当然、「激怒」と言われているほどですから、即座に断るでしょう。一方で、海外でのプレーに野心を持つミッチ・ニコルスとしては、交渉をすることもなく却下したことに「苛立っている」、あるいは「怒っている」などと報じられています(同日のHerald SunおよびSBS)。海外移籍に加え、ニコルスは今年夏のブラジルワールドカップに出場するオーストラリア代表に選ばれるかどうかという点でも当落線上にいるようで、海外で活躍することにより代表選出を確実にしたいと考えているようです。ニコルスが所属した2クラブ、ブリスベン・ロアーとメルボルン・ヴィクトリーで監督を務め、昨年オーストラリア代表監督に就任したポステコグルーも、「アジア最高のリーグ」へのニコルスの移籍に賛同しているとされています(同日のHerald Sun)。また、プロ選手としての評価が現れる年俸面でも、現在の2倍ないし3倍の額が提示されていると言われています(同日のHerald SunおよびSBS。SBSによると約60万ドル)。従って、ニコルスはフラストレーションを高めているに違いなく、代理人のバディ・ファラーは「ヴィクトリーはオファーについて考えもしなかった。彼らが選手のために考え直すことを、あるいは少なくとも交渉することを私は望む」と述べています。

一方のセレッソの側は、ニコルスのどこに注目したのでしょうか。新監督に就任したランコ・ポポヴィッチは、セレッソから新監督就任の公式の発表がなされる前の12月30日、SBSのインタビューに答え、次のように語っています。「はじめて彼を見たのは、2012年のACLでFC東京がブリスベン・ロアーと戦ったときであり、彼が優れていることはすぐにわかりました」「私にとって、ミッチのような選手の魅力とは、柔軟性なのです。彼は6番としても10番としてもプレーすることができる。この柔軟性はとても重要です」「彼は技術的に優れた選手で、Jリーグにもフィットすることができるはずです。それだけではなく、彼は多くのオーストラリア人選手と同様に、正しいメンタリティの持ち主でもあり、それも同じく重要なことです」。

20万ドルのオファーが断られた後、セレッソはまだ再オファーをしていないようです(1月3日のThe Ageの記事)。一方で、12月31日のAAPの記事では2週間以内に再オファーをおこなう模様だと伝えられており、これは「まだ」していないと理解するべきでしょう。また、ニコルスが獲得できない場合、セレッソとしては無策というわけではなく、ポポヴィッチは先のインタビューで、交渉がうまくいかなければ他の場所、とりわけヨーロッパから有能な選手を獲得する意向を表しています。加えて、同じ記事では、ニコルスの件は「クラブを前進させるための3人の新外国籍選手獲得のうちの1人」と位置づけられており、今季も外国籍選手3人体制でいく模様です。若干蛇足ですが、もう年も明けておりますので、早く良い話が聞けることを期待しています。

今出ている情報はおおよそこの程度かと思います。リリース・クローズが設けられておりませんので、セレッソ側としては、メルボルン・ヴィクトリーに拒否されればそれでおしまいということになります。一方のヴィクトリーとしては、どうしても必要な選手であればどのようなオファーでも拒否すればいいわけですが、おそらく唯一の考慮要素としては、ニコルスの士気ではないかと思います。クラブに残留させても、その後ニコルスが不満からパフォーマンスを維持できなければ、それもまたクラブにとって望ましいことではないでしょう。セレッソはおそらくそんなに大きな額のオファーをすることはできないでしょうから、年俸や起用法などの待遇面に加え、ヨーロッパ移籍の可能性をちらつかせながら、ギリギリのところで上積みしたオファーをするしかないのかなと個人的には思っています。まだ期待が持てるような段階ではないと思いますが、セレッソとしてもできるだけ早く来季に向けた体制を固めなければなりませんので、ニコルスに対するオファーを再検討しつつ、他の選択肢も模索し、可能性が低いのであればどこかの段階で見切りをつけないといけないでしょう。この程度のことは当然クラブの方でも考えているはずなので、今後の進展を注意深く見守りたいと思います。

(ここまでを昨日書き、そのままにしていたら、その後「セレッソの最終的なオファーは40万ドルになる模様」との報道が出ました。それでもヴィクトリー側は手放すつもりはないようで、基本的には以上で書いたように、セレッソのオファーの帰趨はニコルスのモチベーション次第ということは変わりないのではないかと思います。今日のAリーグの試合(古巣であるブリスベン・ロアー戦)で、ニコルスはハーフタイムに交代となりました。試合後のマスカット監督へのインタビューによると、「ミッチは悩みで頭の中がいっぱいだった。ベストではなかった」とされています。Sunday Mailの記事は「明らかにセレッソへの移籍をヴィクトリーが断ったことの影響を受けている」と指摘しており、これはセレッソ側にとっては有利に働くことになるかもしれません。もしもニコルスがヴィクトリーのために戦える状況になく、もはやその意思を失ってしまったのであれば、ヴィクトリーにとっての戦術は頭ごなしの拒否から条件闘争に移るかもしれないからです。)