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山口蛍のルヴァンカップ出場はFIFA規則に違反しているのか?

Posted at — Sep 10, 2018

わかりません。

というのが結論といえば結論なのですが、それでは済まないので、事実と考察を以下に記します。

まず、事のはじまりは森保ジャパンに招集されるも怪我で辞退した山口蛍が、まだ招集期間である昨日のルヴァンカップ準々決勝、湘南ベルマーレ戦に出場したことにあります。これが一部で議論を起こしているようです。この議論には法的(ルール的)側面と道義的側面があると思いますが、私は後者にあまり興味がありませんので、ここでは前者だけを取り扱います。

前者の議論において重要なのは、招集されるも辞退した(そしてその辞退が協会により認められた)選手が当該招集期間中にクラブの試合に出場することを妨げるルールがあるのかどうか、ということです。これについて、JFAのルールでなにかあるのかはわかりませんが、FIFAのルールで禁じられているとの指摘がいくつか見られました。

私はFIFAルールの専門家でもなんでもありませんのでよくわかりませんが、おそらく指摘の中で挙げられているのは「選手の地位および移籍に関する規則」(Regulations on the Status and Transfer of Players)ではなかろうかと思います。この附則第一の第5条は、「プレーの制限」という見出しの下、次のように規定しています(拙訳)。

協会によりその代表チームの1つに招集された選手は、この附則の規定に従って、当該協会の合意がない限り、〔所属チームを〕離脱しているまたは離脱しているはずの期間プラス5日間、彼が登録されているチームのためにプレーすることができない〔強調は引用者〕。

従って、「協会の合意」がある限り、クラブの試合に出場することは認められます。ここまでが事実で、ここからが推測ですが、仮にこの規定が今回のケースに適用されるとして、果たして協会で長く仕事をしてきた人がGM(的な役職)を務め、少なくとも近年は継続的に代表選手を輩出してきたクラブが、協会とコミュニケーションをとらずに出場を強行する、と推測することが現実的だろうか、と思います。上記を別言すると、代表チームに招集されていた選手がその招集期間中(プラス5日間)にクラブの試合に出場することが問題になるとすれば、それはクラブと協会の間に紛争が存在することが前提となりますが、今のところそのような報道は見られません。

しかし、そもそもの疑問として、この規定が今回のケースに適用されるのだろうか、というのもあります。JFAは今月2日、「山口蛍選手(セレッソ大阪)と大島僚太選手(川崎フロンターレ)が怪我のため不参加となり、代わって天野純選手(横浜F・マリノス)と守田英正選手(川崎フロンターレ)を招集することになりましたのでお知らせします」というリリースを出しています。これが規則上どのように処理されているのかわかりませんが(諸規則を見ましたが特に関係するものは見当たりませんでした)、「代わって」招集されている以上、「不参加」となった選手については「招集された」という事実が維持されていないと解釈できるのではないでしょうか(そこまで考えてこのリリースが書かれたのかわかりませんが)。そうだとすると、そもそもクラブの試合に出場することになんら問題がないということになります。

また、ルールの話から離れますが、「3日から開始する代表合宿に参加できない」ことと「9日に行われた試合に出場できる」ことは矛盾しません。これは私の完全なる推測ですが、セレッソはどうも選手が負傷しても軽傷の(たとえば直近の試合には出られそうにないがはっきりと一定期間離脱するということは言えない)場合、負傷のリリースを出していないのではないかと思います。そして今回の山口蛍の場合、代表辞退のリリースは出ましたが負傷のリリースは出ていません。従って、1日の浦和レッズ戦に出場できず、3日からの代表合宿への参加も困難で、5日の湘南ベルマーレ戦も回避して調整を続けた結果、多少無理をすれば9日の湘南ベルマーレ戦には出場できる、というのは十分ありえる話です。ただ、いくら「鉄人」とも言える蛍だとはいっても、本当に怪我は大丈夫なのかという別の懸念は残りますが。

ちなみに、招集辞退自体が虚偽だったのではないかというように読み取れる書き込みも中には見られますが、それこそJFAの規則を見ればいいのではないでしょうか。JFAの加盟チーム規則第7条は次のように規定しています。

加盟チームは、所属選手が本協会により代表チーム又は選抜チーム等の一員として招聘された場合、当該選手を参加させる義務を負う。ただし、傷害又は疾病のために、本協会の招聘に応ずることができない選手は、本協会の選定した医師の健康診断を受けなければならない〔強調は引用者〕。

というわけで、100%の確度をもって言うことは困難ですが、山口蛍のルヴァンカップ出場がなんらかの規則に違反しているという可能性はきわめて低いのではないか、というのが私の結論です。

PS

これを書き上げた後にTwitterを見ていたら小田さんがサクッとお答えになっていたので若干徒労感が・・・w